農業系ライターのブログ

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24時間テレビ雑感

8月27日、28日に放映された24時間テレビを見た。もちろん、全部じゃないけど。例年、最後のマラソンゴールを見るともなしに見るくらいで、正直、ほとんど見た記憶がない。昨日もリビングで仕事をしながら、テレビをつけたり消したりするという見方だったので断片的だが、それでも、いろいろ感じたことも多いので、思いつくままに。

 

感想を一言でいうと、忙しい番組だった。内容がぎっしり詰まっていて、どれも駆け足で流れていく感があり、イベント会場で行われている各ブースの催しを見ているような感覚になった。高校生の合唱選手権などはもうちょっとゆっくり見ていたかったのに、テレビのタイムスケジュールがそれを許してくれないのはなんとも残念。合唱選手権、またやってくれないかな。すがすがしくてとてもよかった。

 

そして番組全体のトーンとしては明るく、言われているほどお涙ちょうだいでもないし、感動のおしつけばかりでもないなとも思った。この辺りは人によって受け取り方が異なるし、制作側がどうしても「いい話」「ひたむきに頑張ってる」「成功してバンザイ」にまとめてしまう傾向があるので、なかなか難しいところではある。ただ、毎年必ず偽善だなんだと批判される番組に出ることの意味には、障害があるから頑張ってるのではなく「障害があっても普通に生きている、それは誰でも同じであることを、知って欲しい」という出演する側の思いや覚悟もあるはずで、そこはしっかり受け止めたいと思う。

 

また偽善だなんだと安易に批判する前に、こちら側に「見ると辛い。見世物にしないでくれ」という気持ちはないかという問いかけも必要なのかもしれない。それは障害者の「頑張り」を見て「力をもらった」と思う気持ちと背中合わせなんじゃないかなという気もする。

 

個人的によかったと思ったのは、福山型筋ジストロフィーという難病の女の子のおひるねアート、グレースさんという方のお笑い企画、腕に障害のある少女と芸人さんやメダリストの遠泳、よさこい、ダーツの旅……あたりかな。おひるねアートは気持ちが温かくなるような作品に仕上がり、VTRを見ている女の子も家族も本当にいい笑顔だった。こういう笑顔になれることが一番。そんな挑戦ができてよかったねと、ウルウルするような企画だった。

 

遠泳は、こんな海が荒れている中を……と最初は思ったが、メダリストと芸人さんと少女がリレーしながら泳ぐのは、足りないところを補いあいながらも、水平な関係の中で、力を発揮しあっているのが伝わってきた。もともと少女がかなりのスイマーであるからこそ成立した内容であるにしても、共生(共に生きる)ってこういうことなんじゃないかなと思った。24時間テレビ名物のマラソンもひとりで100㎞を走るより、駅伝のようにいろいろな人が繋いでいくような形にすると、その意義が変わるような気がする。

 

もちろん、すべてのコーナーがよかったかといえば、そうでもない。むむ、これはどうなんだろうという企画もあった。あえてどの企画とは書かないけれど、本人の意思を超えたことを「挑戦したい」と親御さんが言わせてない?その言葉にテレビ局が乗っかってない?と眉をひそめてしまったものもあった。本当のところはわからないが、そんな印象を抱いてしまった。

 

そう思ってしまうか否かの差は、当事者や周囲の人間の映し出されるものから何を感じ取るかの差なのだろう。見ている側はテレビに映し出される表情や言動から情報を得てしまうし、ちょっとした言葉に疑問を持ってしまったりもする。どんなに言葉を繕っても、そこで感じた疑問や印象はなかなかぬぐえない。その意味で、テレビって正直で、恐いメディアだなとも思う。

 

視聴者だって安易な感動話を見たいわけでは決してないし、感動を強制されるような展開は不快に思う。こういった番組の最終的な目的は、障害の有無に関わらず、皆が当たり前に生きていることを視聴者に伝えることであってほしいし、そういう社会のほうが、私たちも生きやすいんだよということも含めて伝わってくるような内容であってほしい。

 

いろいろ書いたけれど、去年、記事、24時間テレビは本当に地球を救っているのか? [ボランティア] All Aboutにも書いたように、全国ネットのテレビ局が40年近くチャリティ番組を続けているのはやっぱりすごいことと改めて思った。そのことに敬意を払いながらも、さまざまな声を受け止め、番組が良い方向に進化するといいんじゃないかなと思う。

 

などと、きれいにまとめてしまうが……。こういう紋切り型になりがちなところが「伝える」ことを生業にする人間の悪いくせかもしれないんだよな……。